3日前に”ポケモン+吉野家は「第二の日本KFC」になれるのか?”という記事を書いたところ、複数の方から「ポケモン効果で吉野家の業績はどのくらい伸びるのか。そのときの株価はどの程度を想定しているのか?」というような内容の質問を受けました。

そこで、今回、僕が推定した吉野家HDの来期(2021年2月期)業績予想と目標株価について書いておきます。

※以下、ひさびさの長文になります。

まずはじめに、ポケモン効果は会社の予想を上回る売れ行きを記録しており、発売2日目にて早くも、一部の店舗で商品在庫切れを起こすほどの人気になっています。

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在庫切れといっても第1弾キャンペーンの3月18日までの在庫がすべてなくなったわけではなく、「ポケ盛」は店舗当たりの1日当たりの割り当て数量が決まっているようで、翌日には店舗に配送されて在庫が復活しているようです。
けれども、今後は、供給体制の強化をしっかりとやっていただきたいですね。


ポケモン効果で吉野家HDの業績がどのくらい伸びるのかを推定するために、吉野家HDの原価率(=売上原価率)と販管費率(=販売費及び一般管理費)に焦点を当てます。

過去2期の上半期・下半期の原価率と販管費率は下記図のとおりです。
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2019年2月期は、2018年2月期比で原価率が1.0ポイント上昇、販管費率が1.1ポイント上昇したため、営業利益率が▲2.1ポイントとなり、営業利益は営業利益率0.1%の104百万円と大幅な減益になりました。

その一方、2020年2月期上半期は、2019年2月期上半期比で原価率が▲0.7ポイント、販管費率が▲2.0ポイント低下したため、営業利益率が2.7ポイントの上昇となり、営業利益は営業利益率2.7%の2,936百万円と大幅な増益になりました。

よって、吉野家HDは、1年間で原価率または販管費率が▲1.0ポイント低下したら営業利益が約2,000百万円増加する会社といえます。
(反対に、原価率または販管費率が1.0ポイント上昇したら営業利益が2,000百万円減少する。)

2020年2月期の期首時点の会社計画の原価率は前年比▲0.5ポイントの低下、販管費率は前年並みです。

ところが、2020年2月期上半期は、原価率が前年比▲0.7ポイントの低下となり、会社計画より少しだけ改善しました。その一方、2020年2月期上半期の販管費率は前年比▲2.0ポイントの低下となり、前年並みの会社計画を大きく上回る改善となりました。

つまり、2020年2月期上半期の大幅増益着地の主な要因は、会社計画を大きく上回る販管費率の低下によるものと言えます。

それではなぜ、人件費の高騰が続く厳しい経営環境の中、販管費率▲2.0ポイントの低下を成し遂げることができたのでしょうか。

その理由は、既存店売上高の大幅な伸びです。
上半期の既存店売上高は、3月から発売開始した超特盛や5月から発売開始したライザップ牛サラダが好評となり、+6.9%の伸びを記録しました。

既存店売上高が増えても、人件費や光熱費、地代家賃など店舗の費用はほとんど増えないため、販管費率は低下します。

例えば、2020年3月期上半期に大幅増益を記録して株価が急騰したケンタッキーの日本KFCは、500円ランチの導入効果で上半期の既存店売上高が二桁%の伸びを記録した結果、販管費率が41.3%から37.5%へ▲3.8ポイントと大きく低下しました。これが大幅増益の主要因です。
吉野家HDが▲2.0ポイントでしたから、日本KFCの▲3.8ポイントは吉野家HDを大きく上回っています。
既存店売上高の伸びは、日本KFCのほうが良かったので当然といえば当然ではありますが。

よって、外食チェーンの既存店売上高が伸びると販管費率が低下することをご理解いただけたのではないでしょうか。


以上をふまえた上で、「ポケ盛」が吉野家HDの販管費率をどのくらい低下させるのかを推定します。

販売開始2日目で一部の店舗で在庫切れを起こすなど会社の予想を上回る売れ行きをみせている「ポケ盛」。女性や子ども連れなど新規顧客の増加、牛丼並盛352円より100円ほど高い単価などを考慮すると、来期(2021年2月期)の既存店売上高を+10%前後引き上げる効果があると推定します。

前述のとおり、2020年2月期上半期は、既存店売上高+6.9%の伸びで販管費率が▲2.0ポイント低下しましたので、最低でも▲2.0ポイントよりは下がるでしょう。だいたい▲2.5ポイント~▲3.5ポイントほど下がるイメージでしょうか。
とりあえずは中間の▲3.0ポイントと推定します。

前述のとおり、販管費率が▲1.0ポイント低下すると営業利益が2,000百万円増えますので、▲3.0ポイントの低下で営業利益が6,000百万円増加します。

よって、ポケモン効果で来期の営業利益は6,000百万円増加すると推定できました。



来期の吉野家HDの業績を推定する上で欠かすことができない要素がもうひとつあります。
それは、米国産牛肉の関税引き下げです。

すでにご存じのとおり、来年1月1日から日米貿易協定が発効して米国産牛肉の関税が引き下げられます。
関税率は2019年度で38.5%から26.6%に低下します。
(2020年度以降も毎年下がる)

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https://mainichi.jp/articles/20190927/ddm/012/020/069000cより引用)


関税率が26.6%に下がると米国産牛肉の仕入れ価格は8.6%下がります
(例えば、輸入する米国産牛肉の関税を含まない価格が1,000円。関税38.5%のとき、日本で輸入するときの価格は1,385円になります。関税26.6%のとき、同様に1,266円になります。1,385円が1,266円に値下がりするため、米国産牛肉の価格は▲8.6%になります。)

前述のとおり吉野家HDの2020年2月期上半期の原価率は35.1%ですが、関税引き下げにより原価率はどの程度下がるのでしょうか。

正確な数字を出すのは難しいのですが、インターネットなどで情報を集めると、牛丼の原価率は40.0%という印象です。
吉野家HDの原価率が35.1%となっていて牛丼45.0%より低い理由は、牛丼以外のサイドメニューの原価率が牛丼より低いこと、はなまるうどんの原価率が牛丼よりも低いためです。

牛丼の原価率40.0%のうち約半分が牛肉、残り半分がお米、玉ねぎ、たれのため、米国産牛肉が牛丼に占める原価率は約20.0%です。

吉野家HDの2019年2月期売上高202,385百万円のうち、牛丼の吉野家(国内)の売上高が103,607百万円と50%を占めています。その他に米国産牛肉を使う業態として、海外吉野家、アークミールがあり、国内の吉野家に海外吉野家とアークミールを加算すると売上高143,969百万円です。

よって、米国産牛肉を使用する店舗売上は、吉野家HDの売上高の71%を占めることになります。
けれども、国内の吉野家、海外吉野家、アークミールでは牛肉以外を使ったメニュー(例えば、豚丼、チキンカレー、サラダなど)もありますから、おおよそのイメージにはなってしまいますが、牛肉を使ったメニューとそれ以外のメニューの比率は8:2ぐらいになると推定します。よって、牛肉を使ったメニューの割合は80%ぐらいでしょうか。

以上から、関税引き下げにより原価率はどの程度下がるのかを計算すると、

仕入れ価格が8.6%下がると、吉野家HDの原価率は、
”仕入れ原価の低下分8.6%×牛丼など米国産牛肉を使った商品のうち米国産牛肉が占める原価率20%×吉野家HDに占める国内の吉野家、海外吉野家、アークミールの売上高の占有率71%×国内の吉野家、海外吉野家、アークミールの牛肉を使った商品の割合80%=0.98。
約1.0ポイント下がります。

米国産牛肉の関税引き下げによって、吉野家HDの原価率が1.0ポイント低下します。

前述のとおり、吉野家HDの原価率が1.0ポイント下がると営業利益は2,000百万円増加します。

よって、米国産牛肉の関税引き下げにより、来期の営業利益は2,000百万円増加すると推定できました。

なお、関税引き下げのほかにも原価率が下がる材料があります。
それは、「ポケ盛」です。
「ポケ盛」は牛丼並盛より単価が100円も高く、牛丼並より原価率が低いため、「ポケ盛」の販売が増えると原価率は下がります
けれども、どのくらい下がるのかを推定することは難しいため、今回は対象外とします。



長くなりましたので、そろそろまとめに入ります。

ポケモン効果で吉野家(国内)の来期(2021年2月期)の既存店売上高が+10%前後伸びると、吉野家HDの販管費が▲3.0ポイント低下して営業利益が6,000百万円増加します。

・来年1月1日から日米貿易協定が発効します。米国産牛肉の関税引き下げにより、吉野家HDの原価率が▲1.0ポイント低下して営業利益が2,000百万円増加します。


2020年2月期の営業利益(推定)ですが、上半期で営業利益2,936百万円で着地しています。消費税増税後も吉野家の既存店売上高は上期並みで推移していることから、2020年2月期の営業利益は6,000百万円は固いでしょう。

よって、僕が推定する来期(2021年2月期)の吉野家HDの営業利益は、2020年2月期の6,000百万円にポケモン効果6,000百万円の増益、米国産牛肉の関税引き下げ2,000百万円の増益を加算した14,000百万円と算出できました。

吉野家HDの来期(2021年2月期)の営業利益(推定)は14,000百万円です。
EPSは135円

会社四季報の来期の営業利益(予想)は4,800百万円、EPS46.4円のため、四季報予想の約3倍という大幅な増益幅になります。
変化率が極めて高く、かなりのインパクトですよね。


次に、来期(2021年2月期)の目標株価を算出します。

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吉野家HDの現在の株価は2,786円で、PERは1,797倍となっています。
今期の会社業績予想の上振れは確実ですが、現時点では通期の営業利益の上方修正を行っていないため、高PERとなっています。

四季報予想では、今期の営業利益4,500百万円、EPS43.3円のため、予想PERは64.3倍です。

前述したとおり、僕の推定では今期の営業利益は6,000百万円は固いと考えます。
また、来期(2021年2月期)の営業利益(推定)は14,000百万円です。
EPSは135円。

来期の目標株価を算出するためには、PERはいくらが適正なのかを考える必要があります。

外食チェーンの平均でPER20.0倍が正しいという意見があるでしょう。
そうなると、PER20.0倍×EPS135円=株価2,700円となり、株価の上昇余地はありません。

しかしながら、PER20.0倍がほんとうに適切といえるのでしょうか。
僕もはじめは同じ見方でした。

けれども、よくよく考えてみると一律PER20.0倍で計算しては、判断を誤るのではないかと考え直しました。

吉野家の個人株主は31万人いて、65.9%を占めている特異な会社です。
株主優待目当てで100株のみ保有している超長期保有の個人だけでも50%近くを占めていて、これが株価を押し上げて高PERの原因になっています。

よって、通常の外食チェーンと吉野家を同じPERで比べるのは乱暴すぎると思いました。

また、株主優待族は株価の下支えになっても上値を買わないから株価は上がらないという意見もあるでしょう。

僕もはじめは株主優待族は上値を買う要素にはならないと思っていましたが、もし、そうであれば、7月9日の第1四半期決算発表後や10月4日の上半期上方修正および第2四半期決算後の株価レンジのブレイクが説明できないことに気がつきました。

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吉野家HDの株価は、年初から7月9日の第1四半期決算までの約6か月間は1,700円~1,900円のレンジで推移していました。

その後、第1四半期決算発表後に株価は上昇して、7月10日から10月4日の上半期上方修正および第2四半期決算までは、2,100円~2,400円のレンジで推移しました。

そして、10月4日の上半期上方修正および第2四半期決算後から現在にいたるまでは、2,500円~2,850円のレンジで推移しています。

したがって、大幅な増益幅を記録した第1四半期決算後、上半期上方修正および第2四半期決算後と2四半期連続で決算後のブレイクが続いていますので、株主優待族のほかに上値を買っている投資家がいるといえます。

関税引き下げ決定による期待感から株価が上昇したと考える人もいるでしょう。
けれども、日米貿易協定が合意したのは9月なので、第1四半期決算後の株価レンジのブレイクは関税期待ではないし、第2四半期決算前には合意がいったんは織り込まれてたので、第2四半期決算後の株価レンジのブレイクも関税期待ではないと考えられます。

吉野家HDの決算後の株価レンジのブレイクはあくまでも増益幅の変化によるもので、今後の四半期決算で第1四半期決算、第2四半期決算と同様に大幅な増益幅を記録すれば、株価のブレイクは続いていくと考えられます。

前述のとおり、吉野家HDの来期(2021年2月期)の営業利益(推定)は14,000百万円です。EPSは135円。

会社四季報の来期の営業利益(予想)は4,800百万円、EPS46.4円のため、四季報予想の約3倍という大幅な増益幅になります。
変化率が極めて高く、かなりのインパクトです。
株価レンジのブレイクが続いてもおかしくはないと思います。

とは言ったものの、目標株価を算出するためにはPERが必要です。
あくまでも僕個人の考えにはなりますが、前述した吉野家HDの特殊な株主構成を考えるとPER30.0~40.0倍ぐらいは評価されてもいいのではないでしょうか。

吉野家HDほどではないですが、個人投資家比率がそこそこ高い日本マクドナルドはPER40.0倍です。

米国産牛肉の関税は毎年下がっていき、最終的には2019年度の26.6%から9.0%へ下がるため、牛肉価格や為替水準が変わらなければ、毎年、原価率が下がっていくなど利益増加効果もしばらく続きます。

吉野家HDの来期(2021年2月期)の営業利益(推定)は14,000百万円です。EPSは135円。

PER30.0倍のときの株価は4,050円。
PER35.0倍のときの株価は4,725円。
PER40.0倍のときの株価は5,400円。

よって、来期(2021年2月期)の目標株価は4,050~5,400円と推定できました。

現在の株価は2,786円のため、これから1年~1年半で株価は+45%~94%上昇する余地があります。
約1.5倍~2.0倍です。