この記事は、ペッパーフードサービスの決算分析に関する考察記事の第3弾になります。事前に第1弾、第2弾を読まれておくとより一層理解が深まります。

・第1弾
 ペッパーフードサービスの2018年12月期本決算のファンダメンタルズ分析
・第2弾
 ペッパーフードサービスの2019年12月期業績計画は過大なものなのか、それとも妥当なものなのか

第3弾では、僕が思い描くペッパーフードサービスの成長ストーリーと2年後の営業利益予想を書きます。

第2弾と同様、これから書く内容ついては将来の話であり、確定した数字ではありませんので客観的な視点のみで書くことは難しく、どうしてもペッパーフードサービスの株主である僕の希望的観測が含まれてしまっているということを前提でお読みください。
よって、同社株を空売りをしている方や同社について快く思っていない方は、気分を害されるでしょうから、ここで読むのをやめてください。







それでは、本題に入ります。

第1弾と第2弾を読まれた方は、現時点でペッパーフードサービスの成長に鈍化はみられず、順調に業績が伸びていることが理解できたのではないでしょうか。

しかしながら、現時点ではよくても、これからは国内いきなりステーキのカニバリや出店余地の縮小が見えてくる、そして、新しい成長ドライバーとして期待されていた米国いきなりステーキの拡大が頓挫した今、同社の将来性に明るい展望を描けないという意見があると思われます。

この意見はもっともであり、反論できるものではありません。
今後、ペッパーランチ、いきなりステーキに次ぐ新業態の開発や新たな海外展開(例えば、中国やアジアでいきなりステーキを始めるなど)で業績が拡大できるという意見はあるでしょうか、現時点ではまったくの未知数です。

そのような状況の中、なぜ僕がペッパーフードサービスの株式を保有し続けているのかと疑問に感じる方がいらっしゃるかもしれませんが、その答えは、そもそもの始まりである僕がペッパーフードサービスを主力化しようと考えた一番の材料、思い描いている成長ストーリーが崩れていないからです。

例えば、僕が米国いきなりステーキの業績拡大に期待してペッパーフードサービスの株を買っていたのであれば、米国いきなりステーキの撤退・縮小が決まった本決算の翌日に株式を全株売却しています。
けれども、そうではないので株式を保有し続けています。

その一番の材料、思い描いている成長ストーリーとは、米国産牛肉の関税引き下げによるペッパーランチといきなりステーキの店舗競争力の飛躍的向上とそれに伴う業績拡大です。

米国産牛肉の関税引き下げが決まれば、ペッパーフードサービスの業績が一変すると考えているからです。


TPP11が昨年12月30日に発効しました。
日本は、12月30、31日のわずか2日間が「発効1年目」とみなされ、2019年1月1日から「発効2年目」となりました。
日本の年度が替わるのは4月1日で、日本では2019年4月1日から2年目です。
そのため、牛肉の輸入関税は38.5%から発効日の12月30日に27.5%、2年目に入る2019年4月1日に26.7%となります。

米国はTPP11には参加していません。
そのため、米国産牛肉の輸入関税は現時点では下がっていませんが、米国産牛肉の関税引き下げについてはTAG(物品貿易協定)交渉で議論になります。
TAG交渉はもともと今年の1月から始まる予定でしたが、トランプ政権が中国との貿易問題解決を最優先事項としているため、予定が延期されています。
けれども、中国との貿易問題は3月頃には一定の目途が立つと見られていること、また、6月に予定されているトランプ大統領が来日する日がTAG交渉の妥結期限とも言われています。
さらに米国産牛肉の関税の引き下げがおこなわれないと米国産牛肉の輸出競争力が落ちます。
実際にTPP発効後に日本ではカナダ産牛肉の輸入が増えています。
再選をもくろむトランプ大統領は遅くとも来年の大統領選挙までには目に見える成果を得たいはずで、今年中にはTPP並みまたはそれ以上の関税引き下げが決まると考えられます。


それでは次に、米国産牛肉の関税がTPP11と同じ幅引き下げられた場合、ペッパーフードサービスの業績にどの程度プラスの影響があるのかを推定します。
とは言ったものの、ペッパーランチ事業、レストラン事業、いきなりステーキ事業と多岐にわたるためすべての事業について細かく見ていくことは骨が折れます。
そこで、今回は一番プラスの影響が大きいいきなりステーキ事業に焦点を当てて、いきなりステーキ事業にどの程度のプラスの影響があるのかを推定します。


2018年12月期のいきなりステーキ事業のセグメント売上高は54,132百万円、営業利益は5,312百万円でした。

会社が発表した2019年12月期業績計画の売上高を達成するためには、ペッパーランチ事業の売上高が+10%成長したとき、いきなりステーキ事業の売上高は+54%成長する必要があります。
よって、会社計画を達成したときには、2019年12月期のいきなりステーキ事業のセグメント売上高は83,363百万円(※計算式:54,132×1.54)になります。

米国産牛肉の関税がTPP11と同じ幅引き下げられた場合、2019年4月1日に26.7%となります。
現在の関税率が38.5%のため、米国産牛肉の仕入れ価格は8.5%低くなります。

いきなりステーキの米国産牛肉の原価率は約70%です。
牛肉より原価率が低い米、サラダ、スープなどを含めるといきなりステーキの原価率は約60%です。
そのため、原価率に占める牛肉の割合は70%~80%、この数字には国産牛肉も含まれているので、米国産牛肉のみの割合はおおよそ70%前後、残りの20~30%が米、サラダ、スープ、飲料などであると推定されます。

関税率が26.7%に下がると米国産牛肉の仕入れ価格は8.5%下がります。
(例えば、輸入する米国産牛肉の関税を含まない価格が1,000円。関税38.5%のとき、日本で輸入するときの価格は1,385円になります。関税26.7%のとき、同様に1,267円になります。1,385円が1,267円に値下がりするため、米国産牛肉の価格は▲8.5%になります。)

よって、仕入れ価格が8.5%下がると、いきなりステーキ事業の売上高売上原価率は、”仕入れ原価の低下分8.5%×原価率60%×原価率に占める米国産牛肉の割合70%=3.57%”下がることになります。

売上高売上原価率が3.57%下がると、営業利益率が3.57%上がります。

したがって、米国産牛肉の関税が26.7%に下がることによって、いきなりステーキ事業の営業利益率が3.57%上昇するというプラスの影響がでます。

前述のとおり2019年の会社計画を達成したときには、2019年12月期のいきなりステーキ事業のセグメント売上高は83,363百万円になります。

よって、米国産牛肉の関税が26.7%に下がることによって、年間で”83,363百万円×3.57%=2,976百万円の利益増加となります。

その結果、米国産牛肉の関税引き下げを先取りして反映させた潜在的な2019年12月期のペッパーフードサービスの営業利益は、会社計画5,594百万円+2,976百万円=8,570百万円になります。  
細かい計算は省きますが、いきなりステーキ事業だけでなくペッパーランチ事業やレストラン事業でも米国産牛肉を使用しているため、米国産牛肉の関税引き下げを先取りして反映させた潜在的な2019年12月期のペッパーフードサービスの営業利益は8,570百万円+α(プラス・アルファ)となります。

現実には、関税引き下げの一部を消費者に還元するために値下げすることが予想されるため、原価率は上記のとおりの改善幅にはなりません。その一方、値下げにより客数増が期待できるため、既存店売上高が増加して店舗利益率が改善されます。よって、全体としてみれば2,976百万円+α(プラス・アルファ)の利益増加が期待できると考えられます。

また、牛肉の関税は毎年少しずつ引き下げられて、最終的には9.0%まで下がります。毎年、恩恵を受けられます。これは地味ですが、意外と大きなメリットです。
最終的に関税率は9.0%まで下がるので、仕入れ価格は21.3%下がります


長くなりましたが、最後に僕が現時点で考えるペッパーフードサービスの2年後の営業利益予想を書きます。
今から2年後の2020年12月期の本決算のとき(日付は2021年2月)のものです。

TAG交渉が今年中に締結して米国産牛肉の関税がTPP11と同じ幅引き下げられた場合という条件付きになります。また、為替相場や牛肉価格が大きく変わらない。
そして、2019年12月期は会社計画どおりに着地、2020年12月期は2019年に新規出店する計画のいきなりステーキ210店舗がフル寄与するが、2020年には出店余地が狭まることやカニバリにより、2020年12月期の増収率が+20.0%まで落ち込み、2020年12月期の増益率は+10.0%にとどまると予想します。

このとき、2020年12月期のペッパーフードサービスの営業利益は、2019年12月期のペッパーフードサービスの営業利益計画5,594百万円+米国産牛肉関税引き下げによる利益増加2,976百万円+α(プラス・アルファ)+2020年12月期の増益率5,594×10%(=559百万円)となります。
(計算式:5594+2,976+α+559)

厳密には、関税引き下げは2020年4月に26.7%からさらに下がり、また売上高も2020年は2019年より増えているため、上記の計算よりもさらに利益増となります。
とにかく、計算式が複雑化してわかりにくいのですが、僕のおおまかなイメージとしては、営業利益9,000~10,000百万円を達成できると考えています。

つまり、米国産牛肉の関税引き下げによるペッパーランチといきなりステーキの店舗競争力の飛躍的向上とそれに伴う業績拡大
そして、ペッパーフードサービスは、2020年12月期に営業利益9,000~10,000百万円を達成できるポテンシャルを秘めているいうことが、僕の思い描く成長ストーリーです。

以上で終わりです。残りは補足と余談です。


(補足)
ここまで読まれて、関税引き下げによる利益増の計算はあくまでも計算式上の話であり、本当に3,500百万円以上の利益底上げ効果があるのか、机上の空論ではないかという意見が生じるかもしれません。たしかに計算式上の話であって実際にフタを開けてみるまでわかりません。
けれども確実に正しいと言えることは、引き下げが決まれば、2019年4月には関税率が26.7%に下がるため米国産牛肉の仕入れ価格は8.5%下がるという事実です。
最終的に関税率は9.0%まで下がるので、仕入れ価格は21.3%下がります
あとは、この
関税引き下げで得られた原資をどのように使うのかです。

ペッパーフードサービスだけでなく同業他社も仕入れ価格が下がる恩恵を受けるので、たいしてプラスの効果はないのではという考えが浮かぶかもしれません。
けれども、他の外食チェーンよりも原価率が高く、米国産牛肉の仕入量が外食チェーンの中で日本一のペッパーフードサービスが一番恩恵を受けられます。

また、ペッパーランチやいきなりステーキの競合店は牛肉を扱う外食店だけではありません。
例えば肉だけでも、豚肉(カツ丼、とんかつ店など)、鶏肉(唐揚げ店など)を扱う外食店が競合店です。
仕入れ価格が下がったことで得られた原資で値下げまたは割引キャンペーンを打ち出すことで、豚肉(カツ丼、とんかつ店など)や鶏肉(唐揚げ店など)を扱う外食店と比べると店舗競争力が高まって客を奪うことができます。
外食全体に広げるとラーメン、うどん、そば、イタリアン、カレーライス店なども競合店です。

例えば、今秋までに関税引き下げが決まった場合、10月の消費税増税のタイミングで値下げや割引キャンペーンを打ち出すことができます。
他の外食チェーンの価格が増税した分をそのまま上乗せして値上がりするなか、ペッパーランチやいきなりステーキが米国産牛肉の仕入れ価格の下がった分を値引き原資として値下げを打ち出せば、他の外食チェーンと比べて価格優位性が出せます。
増税なのに値下げって、インパクト大きいですよね。

また、株価は期待先行で上がります。まずはじめに、関税引き下げが決まれば恩恵銘柄としてペッパーフードサービスの株価には追い風が吹きます。その次には仕入れ価格が下がったことで得られる原資で値下げまたは大々的な割引キャンペーンを打ち出すことで、客数増により月次既存店売上高が上向き、株価にプラスの影響が生じます。そして、関税引き下げ後にはじめて迎える四半期決算までに業績拡大への期待から先行して株価が上昇すると予想することもできます。その後は、四半期決算の数字次第です。僕の机上の計算式のように利益が増えたのか、それともほとんど増えなかったのか。


(余談)
過去に僕のファンダメンタルズ分析の記事を読んでいただいている方は知っておられると思いますが、僕のファンダメンタルズ分析は主に収益面に焦点を当てたものになります。よって、資産・負債面についてはまったく触れていません。

ペッパーフードサービスは、2018年12月期に米国いきなりステーキの撤退・縮小で特別損失を計上したことによって、自己資本が減少しました。
具体的には、株主資本は特別損失と配当支払いにより4,204百万円から3,556百万円に減りました。自己資本比率も低くなっています。
けれども、2019年に計画どおりの着地をすると当期純利益が3,493百万円増えるため、2019年の配当支払い(1株あたり30円配当)で624百万円が減ったとしても、3,556+3,493-624=6,425百万円となって急回復しますので、過度な心配は不要です。

また、増資の可能性については極めて低いと考えています。
その理由は、現在の株式市場では公募増資を行う企業はほとんどみかけないことから同社が公募増資を行うことは難しいそうだからです。
また、今流行りのMSワラントについては、同社は2014年にマイルストーン社に対する第三者割り当てによる新株予約権の発行をしたものの、発行後に株価が低迷してすんなりと資金調達できなかった経験があるため、似たような商品であるMSワラントに手を出すとは考えにくいです。
とは言ったものの、増資の可能性はゼロではありません。

あと、国内いきなりステーキの月次既存店売上高マイナスについてですが、こちらは今年中にはプラス転換すると考えています。
もともと、2017年はTVなどさまざまなメディアでいきなりステーキが取り上げられて宣伝効果があったことから、2017年4月から2018年3月までの既存店売上高はプラスと好調に推移しました。そして、丸1年が経ってその反動として前年ハードルが高くなった2018年4月以降は既存店売上高がマイナスに転じました。
これは、ある意味しかたがないことです。前年のハードルが高すぎたのだから。ただ、この特需も1周することで前年ハードルが低くなります。
さらに、米国産牛肉の関税引き下げが決まれば、値下げやさまざまな販促策を展開すること、そして関税引き下げの恩恵を受ける企業の代表としてマスコミにも取り上げられるでしょうから宣伝効果も出て、既存店売上高はプラスに転じると考えています。

※2019年3月7日追記
仕入れ価格が8.5%下がったときの売上高売上原価率の計算式の中で”仕入れ原価の低下分8.5%”の記載漏れ(参入漏れ)があったため、計算式を修正しました。
それに伴って、計算式から算出できる営業利益増加額も変わるため、こちらも修正しました。